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「くすり」を創る科学
AIとシミュレーションによる未来

終了

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 2020年に始まったCOVID-19によるパンデミックは、6億人以上が感染し、680万人以上の死者に加え、大きな経済的な打撃をもたらしました。一方、癌などの難病や希少な遺伝病で苦しむ人も多く、これまで以上に様々な種類の病気に対応できる「くすり」を迅速に創ることができる体制が望まれています。
 効果が高く副作用のない「くすり」を創るために、従来は手持ちの「くすり」の候補物質を端から試験する方法が使われてきましたが、近年、AIとシミュレーションの利用が広がりつつあります。病気の原因となるタンパク質に強く作用する「くすり」の候補を分子シミュレーションによって予測することは、「富岳」などのスーパーコンピュータによって実用性が大きく向上しつつあります。また、副作用については、体の中の様々な臓器やタンパク質への作用の有無について、これまでに集めた膨大なデータによって学習したAIによる予測が使われ始めています。
 当日は、AIとシミュレーションによる「くすり」を創る科学の現状と将来の展望をお話しして、皆さんと議論できればと考えています。

講師 本間 光貴

本間 光貴 肖像イメージ

理化学研究所 生命機能科学研究センター 制御分子設計研究チーム チームリーダー

1969年生まれ。北海道大学出身(理学博士)。「くすり」の設計には、大学時代から興味を持ち、製薬企業(万有製薬とファイザー)での経験を含み35年くらい取り組んでいます。
「くすり」の候補は、10の60乗個以上あり、体の様々な部分に作用し、時には毒になります。
膨大な候補の中から迅速に優秀な「くすり」を見つけ出すのは、宇宙空間を探索することにも例えられるほどです。
それでというわけではありませんが、趣味は、天体観測と街歩き。皆既日食は、1億5000万キロメートルの距離の中で3つの天体が完全に直列するのを体感できて、とても好きです。
2012年(オーストラリア)と2017年(アメリカ)で目にすることができました。2024年(アメリカ)にも見に行きます。2035年に日本でも見えますよ!

開催要項(PDF: 818KB)はこちら

イベントの様子

  • 講演中の写真
  • 講演中の写真

横浜市立横浜サイエンスフロンティア高等学校・附属中学校で理研よこはまサイエンスカフェを開催。
在校生の皆さんの他、一般応募の方も含めて90名近くの幅広い年代の方々にご参加いただきました。
薬の候補は10の60乗個以上。薬が創られるまでの道のりは長いが、AIとシミュレーションによる効率化は進んでいること、また産学連携等により、創薬AIプラットフォームが構築されてきていることについて本間光貴チームリーダーが解説しました。
その中で、創薬の調査についてはデータサイエンティストの保田真友子技術員から、FMO法については渡邉千鶴研究員から解説しました。
後半は多くの方との質疑応答がありました。動物やヒトを使った試験をAIの活用で減らせるのか?という問いについては、すでにAIの活用で動物を使った試験は減ってきていること、将来的にはAIとシミュレーションで人間の臓器をつくって試験することができるようになると回答しました。
また、研究者や医師はAIに仕事を奪われるのでは?という問いについては、AIはアドバイザーでありアイデアジェネレーターで、最終決定はあくまでも人間が行うと回答するなど、非常に活発なやりとりが繰り広げられました。
終了後のアンケートでは「実際に研究していることについての話が聞けてとても面白かった」「AIの現状と将来の展望について興味が深まった」「AIの活用の部分をもっと聞きたかった」との声をいただき、多くの方がAIによる創薬に非常に高い関心を持っていることがわかりました。
理研横浜キャンパスでは、今後も皆様に興味を持っていただけるようなイベント・プログラムを企画してまいります。

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